アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.18

「今年の主役は〜アマビエ〜」

アマビエ

さすがに猛暑も和らぎ、稲穂が垂れる彼岸がやってきて、佐鳴湖公園の里山に恒例の案山子が登場したが、はやりコロナ禍の今年の案山子の主役は「アマビエ」だった。コロナ過で初めて「妖怪アマビエ」なるものを初めて知ったが、いったいどんな妖怪なのか。

江戸時代後期に製作された瓦版のような刷り物に、絵と文が記されている。肥後国(現・熊本県)に夜ごと海に光物が出現し、役人が赴いたところ、アマビエと名乗るものが現れて役人に対し、「当年より6か年の間は諸国に豊作が続くが、同時に疫病が流行するから、私の姿を描き写した絵を人々に早々に見せよ」と予言めいたことを告げ、海の中に帰っていったという。その他の地域にも、「アマビコ」や「アリエ」など、予言内容も姿も似たような妖怪の話があるそうだ。

2020年4月頃から寺院や神社など日本各地で護符や朱印の印判にアマビエが用い始めたという。いずれも新型コロナウイルスの流行後、自粛期間中や緊急事態宣言後に「疫病退散」祈願のため用いられ始め、アマビエ・ブームになった。また、ブームにあやかって和洋菓子のラベルデザインなど、さっそく様々な業者がアマビエ・ブームに便乗するのも日本ならではの風景だ。

さて、インフルエンザだってワクチンがあっても毎年3千人以上が死亡しており、コロナよりずっと多い。何事もリスクをゼロにすることが不可能なら、コロナのリスクもどこまで許容するかを考えないと、いつまでもこのままというわけにはいかない。コロナ過で社会全体が疲弊して経済的にも精神的にも限界にきている。これからの第三波の流行が懸念される冬の陣に向かって、菅新政権には適切なコロナ禍の舵取を期待したいが、コロナ感染拡大防止と経済の推進という相反する対応に、ブレーキとアクセルを同時に使い分ける高度な運転が求められる。踏み間違いだけはしないようにお願いしたい。(2020.9.20)

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