アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.11

「音楽は不要不急か?」

ギター

音楽が好きなので、また音楽の話題をひとつ。 新型コロナウイルスによる自粛要請が始まったころ、音楽の演奏活動も軒並み中止になった。ある交響楽団の団員がテレビの番組の中で「我々のやっている音楽の仕事は不要不急なのか?」と嘆いていたのが印象に残った。音楽は「不急」か?と問われれば反論は難しいが、「不要」でないことだけは確信をもって言える。これは誰もが認めるだろう。太古の昔から音楽と生活は切っても切れない密な関係なのだ。うれしい時、悲しい時、苦しい時、どんな時でも音楽によって癒され、励まされ、人間の心の底から自然発生的に生まれたのが音楽だからだ。

一方「コロナ禍のステイホームで音楽と接点を持ち、楽器の価値が見直される好機になった」とヤマハの中田卓也社長が言っていた。コロナのお蔭で生活の中に音楽の必要性や価値が見直されるきっかけになったとは、何とも皮肉な現象だ。音楽をやっていてつくづく感じるのは、音楽は間違いなく「こころにひびく」ことを実感する。あるサロンの会場で私が、平凡な夫婦の幸せな人生を歌った内容の曲を弾き語りで演奏していた時、前列にいた60歳代の女性が突然ハンカチで目を抑えたのには少しビックリした。後でお聞きしたら「昨年主人がガンで亡くなりました」とおっしゃった。20年間音楽療法の勉強を続けながら、こうしたサロンの演奏会も時々させてもらう。音楽は間違いなく「人のこころにひびく」ことを実感した瞬間だった。(2020.7.20)

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