アンドレのフォト・エッセイ「令和つれづれ草」No.10

「セミの第一声」

セミの抜け殻

梅雨と言えば、むかしは「しとしと降る雨」の印象で、「たまにはのんびり家で読書をして過ごす良い機会」や「日照りが続く庭の水まきをしなくて済むので助かる」だったり、農家では田植えが終わった稲や農作物の成長には欠かせない気象現象だったが、最近の梅雨はどうも性格が全く変わって豪雨の季節に変わってしまった。連日見るニュースの被災地の映像が痛ましいが、これも地球温暖化の影響だと言う。

それでも自然界の営みは絶えることなく確実にめぐってくる。毎年梅雨の時期になるとセミの第一声が気になる。クマゼミの第一声を毎年記録しているが今年は7月11日だった。「もう少し前から鳴いていたよ」とかみさんは言うが、あくまで我が家から私の耳で聞いたクマゼミの第一声を基準にしている。2019年の第一声は7月13日、2018は7月8日、2017年は7月10日だった。いづれにしても毎年7月10日前後だ。セミの第一声を聞くと梅雨が明けて本格的な夏になる。しかし、すでにうんざりするほど降ったのに、今年の梅雨明けはまだ先のようだ。梅雨明けが待ちきれなくて地上へ出てきてしまったのが第一声のセミたちだ。

セミの種類にもよるが、アブラゼミは幼虫時代を地下で6年ほど過ごして、梅雨明けの頃、夕方に地上に出て日没後に羽化する。夜の間に羽を伸ばして外敵が現れる朝までには飛翔できる状態で夜明けを待つのだ。毎年夏になると庭のキンモクセイの木にセミの抜け殻がたくさんあるに、羽化する現場を見たことがないのは、夜こっそり羽化しているからだ。成虫になってからの寿命は飼育が難しいので昔は1〜2週間と言っていたが、最近の研究では自然界では1か月くらいは生きているのもあるらしい。クマゼミの寿命はアブラゼミより短く2週間程度のようだが、いずれにしても、昆虫の世界では成虫になるのは子孫を残すのが目的で、無事卵を産んで子孫を残せば、やがて死んでいく。子育てが終わってから80歳も90歳も、近年は100歳までも生き続ける人間とはずいぶん生きざまが違う。高齢になってもそんなに長く生き続ける人間の目的は何なのか?自分のこれからの目的をじっくり考えてみたい。(2020.7.12)

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