アンドレの「デジカメで気ままにエッセイ」No.36

“蜂の世界には定年もリストラもない?”

7月の初めに我が家の石垣に蜂が巣作りを始めました。毎日一生懸 命休みなく働く姿を見ていると、とても取ってしまおう、などと言 う、残酷な事は出来ませんでした。人間に危害を加えたなら兎も角 も、そうでなければ同じ地球上の生き物として、人間も、小さな蜂 も、平等に生きる権利があります。しばらくそっと見守ることにし ました。

さて、蜂は実に良く働きます。毎日毎日、土日も昼休みもなく、ま してや定年後をのんびり年金で暮らしている蜂など見たことがあり ません。蜂の社会には定年も就職難もリストラもないのでしょう か。知りませんよ、ほんとのことは。別に蜂に聞いた訳ではありま せんから。

しかし、人間の社会は今や大変な時代になっています。バブルが崩 壊してからの日本は、長引く不況の中、どの企業も生き残りの為、 手っ取り早い人件費削減策を行っています。リストラの名のもと に、何十年も掛けて育ててきた人材をポイポイ捨てだしたのです。 新入社員も余り採用しなくなってしまいました。就職できない高 校、大学の新卒の失業者が大勢発生してしまっています。

リストラと新卒社員の採用を控えた企業は、人材不足を人件費の安 いアルバイトやパートタイマーで補う形が一般化してしまいまし た。いわゆるフリーターの大幅な増加を生む結果になったのです。 今や15〜34歳の5人に1人がフリーターだそうです。正社員になりた くても採用してくれないのです。しかもフリーターの方が気が楽で いいという若者が増えた事も事実です。

もう一つの問題は、正社員として入社しても、入社後3年以内に高 卒で5割、大卒で3割が離職する傾向にあることです。若年層の就職 意識の変化と企業側も魅力ある職場作りがされていないということ です。日本の社会の伝統的だった終身雇用は完全に崩壊してしまっ たようです。

現代のような環境変化の激しい時代には、正社員よりも安上がりと いう理由と共にフリーターの方が変化に対処し易いということで す。一方働く方も「ほんとは正社員になりたいけど、ほんとに働き たいところが見つからない。」という人も多いけれど、「人間関係 が気楽で、時間が自由になるし、責任も負いたくない」という若者 が多くなった事も事実です。

こういう傾向が長く続くと社会的に将来大きな問題が生じる事が危 惧されます。若い時は仕事の力をつける上で重要の時期です。技能 や技術を身につける重要の時期に責任ある仕事が出来ないまま歳を とってしまう人ばかりが増えてしまことになるのです。

企業も人件費が安いからと、今の都合だけでフリーターの増加で一 時しのぎをしても、長期的に若い社員を育てないと将来必ず付けが 来る事は間違いありません。その時に慌てても、もう遅いのです。

1人で心配しても、どうにもなる問題ではありませんが、蜂の社会 と人間の社会と、ほんとはどっちが幸せなのか考えてしまいます。(2003・9・7)

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